チャンピオン【完】
「そんなに俺を見たいなら、今見たら? 練習中は集中してないと危ねーよ?」
「見てないよ!! あんたが見てるから目が合うんじゃん」
私をからかってふざけているのかと思ったら、真剣な顔だ。
「俺はまた余所見してないか心配してるだけよ? でも100%目が合うな。
やっぱりお前が見てる」
断定口調に腹は立つが言ってる事は事実なので、顎をもたれたままの私は最後の抵抗に視線だけ大きくそらして唇をかみしめた。
これは困ったぞ。
『惚れたのか』とでも聞かれたらどうしよう...
違います! って私は言える?
脳筋のあんたなんか大嫌い! って、前みたいに言える?
前みたいに見た目が怖い訳じゃない。
屈服することへの恐怖に怯える私を見て、貴丸の表情が緩んだ。
「女王様は可愛くねーなぁ... ほんと可愛くねぇ」
大事なことだから二度言いました、とばかりに繰り返し、貴丸は笑って手を離してくれた。