チャンピオン【完】
しかし、脳筋には常識が通じないのだ。
好きにしたらいい。
可愛くない私なんて、死にたい。
「腹筋するから押さえてくれよ」
「... 」
なんだよ、めんどくせーな。
いつもやってんだろ、一人でやれよ。
チッ。
心の中で舌打ちしながら私は貴丸の足を抑えにかかった。
爪先あたりを両手でマットに押し付けたが、彼が上半身を起こすと私の重しは何の効果もなかった。
貴丸が露骨に「この女つかえねー」と言う顔をしていてムカついた。
「... お前軽すぎんだわ。乗れ」
「チッ」
今度は聞こえるように舌打ちをして、足の上に座りこんでやった。
人間の肉体とは思えぬほど、硬い。
座り心地悪いったらありゃしない。