チャンピオン【完】
11※シャイガール
※
試合会場に向かう興行用の大型バスの中。
何故か六甲おろしの大合唱が始まった。
「な、なんなのコレ?」
私は慌てて通路を挟んだ席に座る練習生くんの肩を叩いた。
「気合です!! 詩さんもご一緒に!?」
「あ、私はいいや... 」
歌詞知らないし。
このテンションに関わりたくない。
バスガイドの位置で陽気に指揮者を気取っている兄貴は良いとして、奴は?
こっそりと振り向いた一番後ろの席、貴丸は頬杖をついて窓の外流れる景色を見ていた。
私たち、昨日の今日だよね。
あんなに広い席を独り占めしているのなら、「僕の隣においでよ、詩☆」とか誘ってくれたって良いのではなくて?
「... 」
いや、奴はそんなキャラではない。