チャンピオン【完】
「詩さぁああああん!? 限界! 俺、限界です!!」
「この年でおもらしなんて嫌だぁああ!!」
私が籠城しているせいで、ここに暮らす練習生くんたちは小用をたせないのであった。
... 泣くが良いさ、叫ぶがいいさ。
このビルひとつ屋根の下で衣食住を共にしてはいるが、私の好みは線の細いミウラ〇ルマ君とかサトウ〇ケル君だ。
あんたたちのような脳筋連中なんて、大嫌い。
可哀想だが、漏らすなりなんなりしてくれ。
この籠城には私の人生が掛っている。
正直籠るなら自分の部屋にしたらよかったな、とか... 今更出て行きにくいな、とか思ってもいたが、私も意地になっています。
私に出てくるように説得を続けていた兄貴の声が止んだ。
ボソボソと低くやり取りしているのが、扉に耳をつけた私に届いた。
「... 下がれ! 詩!」
強い調子の兄貴の声。
兄貴の命令には逆らえないと頭に刷り込まれている私は、思わず扉から身を引いた。