チャンピオン【完】
「あの、もう行っても良いですか」
「素人だって言うから甘く見てた... そっちがその気なら、私にも考えがありますウフフ」
まだ何か言っていたが、私は無視して更衣室を走り出た。
変な人とは関わらないのが一番なのだ。
私の背中に「逃げられるのは今のうちよ!」と言う笑い声が掛った。
再び私は聞こえない振りをした。
会場の関係者入り口に横付けされたバスからはわからなかったが、相当お客さんが入っているらしい。
何組かの試合が先にあり、私たちの出番は一番最後。
「は!? いきなりトリなんですか!?」
そんなこと聞いてない。
兄貴はご機嫌に会場の中が映し出されているモニター画面を指差した。
「見てよ、満席♪ こんなデカい箱久々なのに、嬉しいな♪」
「嬉しくないよ! 大変なことになりました!」
こんなに人がいたら、この中に了くんがいても可笑しくはない... 。
ほんとどうしよう。