チャンピオン【完】
「相変わらず下手くそな歌だな♪」
このアホな曲はミコトの歌らしい... 。私はちょっと引いた。
リングにあがった二人。
ミコトがマグマの首に抱きつき、キスをした。
勝利を確信するかのような笑みを浮かべる男女。
会場からは地鳴りのどよめきが起こったが、それをみてしまった私の気持ちはさらに引いた。
「いるんだね。こんなとこにもバカップル」
「詩さんのことは我々が守るぞー!」
「おー!」
『お触りは禁止です☆』のプラカードを高く掲げて、練習生くんたちが気合いを入れた。
貴丸が裸の上半身に袖を通しだしたのは、丈の長い暴走族の特攻服みたいだ。
背中の逆十字を覆う、黒地に光る『天下無双』の金文字。
それについたフードを、彼は視界平気なのかと思うほどすっぽりと頭から被ってしまった。
ごく、と自分の喉がなった。
いよいよです。