チャンピオン【完】
12※スピークラウダー
※
音楽が変わり、曲調が変化したと同時に目の前の扉が開いた。
「貴丸の入場曲久々だ♪ これを聞きたかったんだ♪
いってらっしゃ〜い☆」
兄貴はいつもと同じに笑っている。
天下に並ぶものがないと名乗る男が一緒なんだから、私別に鳳凰も怖くない。
花道に現れた貴丸を、お帰り! の野太い大歓声が迎えた。
客席は見渡す限りの満席。
私は大股でリングに向かう特攻服の後ろ。
SPの練習生に守られながら、「なんかすみません」という足取りでついて行った。
あげてくれているロープを貴丸に続いて潜り、ついに来てしまいましたリングの上。
この特攻服はこの時間だけのものだったのか。
脱ぎ去り練習生くんに手渡そうとしている貴丸の背中に、いきなりマグマがドロップキックをかました。
「ちょっとぉ!! 奇襲とか卑怯じゃね!?」
「詩! いいからこっちこっち!」