チャンピオン【完】
マグマの足を綺麗に四字に固めた貴丸が、私に向かって顎をしゃくった。
「出番だよ、詩。あそこに上って、マグマに思いっきり飛び蹴りしてこい☆」
自分が出ている事を忘れてた!!
やっぱやんなきゃ、ダメだよね...
「よいしょ... 」
小さな掛け声とともに私は赤いポールによじ登り、打ち合わせ通りに一旦ポーズを決めて止まった。
「喰らえ! 月光・スペシャル・コンバット・キーック!!」
技の名前は今適当に付けた。
私の見栄とキックに、観客が大いに盛り上がった。
キックを受けたマグマは拘束を解かれ、腹を押さえてリング上を転げまわっている。
貴丸が片手を私に向けて上げた。
ボーリングでストライクとった時の「イエイ!」の感覚で、私は笑顔でその手を叩いた。
すると彼は無言で立ち上がり、ロープを潜ってリングの外に出てしまった。
... なにぃ!? タッチ(交代)、だったのか。