桜歌
桜、舞い散る



 校門から続く桜並木を、
 私は教室の窓際の席で
 ただただぼんやりと見つめていた。


 「美緒…!」

 名前を呼ばれて
 ぺしっと頭を叩かれたのに
 気付いた私は、その人物の方へと
 顔を向ける。


 「明里、痛いっ」
 「美緒がまたぼーっとしてる
 から…!」
 「あはは…またぼーっとしちゃ
 ってたか」


 明里は、近くにあった椅子を
 引っ張ってきて
 私の近くに腰を下ろした。


 「…先輩の事考えてたの?」
 「んー……、うん」


 中学3年間と高校1年間を
 同じ空気の中で過ごして来た
 橋本明里は、知らず知らずのうちに
 仲良くなって、4年間で
 一番一緒にいた友達。

 だからこそ、明里には
 私の考えていることが
 手に取るように分かってしまう
 らしい。私が分かりやすい
 性格だってこともあるだろうけど。

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