桜歌
「…そう簡単に忘れられないか」
ぼーっとしてると
無意識に頭の中で絡み合う
この気持ちは、
先月卒業してしまった
陽介先輩のこと。
―うん、
そう相槌を打ちながら
窓の外にある桜の木に
視線を移すと、まだ蕾のまま
だった桜の木の中を
歩いて行く陽介先輩を
思い出してしまい
きゅっと胸が苦しくなって
思わず眉間に皺を寄せた。
「だよね…、」
卒業してしまった陽介先輩には
新しい場所や新しい生活が
待っていて、まだまだ未熟な私には
入る隙間なんて少しもない。
「存在が大きすぎるな~…、」
卒業してしまう前も、陽介先輩の
存在は私にとってすごく大きいもの
だったけど、卒業してしまった
今では、存在の大きさが更に明確に
なってしまった。