灰色の羽
チャーは体をくの字に曲げ、尻餅をついた。


「本来なら10の13乗発ぶち込んでやりたいとこだけど、今回はそれで勘弁してあげる。」


「あ、悪魔…」


「あ?なんか言った?!」


「い、いえ…あ、ありがとうございました……」

チャーとのやり取りで幾分か心の奥が楽になった気がした。


つくづくこいつは私を救うな、と少し心で自分を嘲った。



だけど、



「で、これからどうする?マキ。」



一度転がりだしたら止まることはない…



「パトはどう思う?」
パトにそのまま質問を返す。



きっとこの男はこう言う、



「んーまぁ今日はもう遅いし、動き出すなら明日の方がいいんじゃない?」



やっぱり…



それが少女のために言ったのではないこともわかってる、



「私も同じ意見。」



私のためだ。


はっきり言ってあの子をうちに置いておくのは嫌だけど、今日はもう疲れた。何も考えたくない。パトには感謝しないと。


それに…



「じゃあ、今日は解散にしましょう。あの子は今晩あそこに寝かせとくわ。」



記憶の奥にあった、



「パトは明日の朝うちにきて、チャーあんたもね。」



『それ』は勢いを増していく、



「え、おれ来た意味ないじゃん…」



抗う気力など今の私にはない。


「ほら、チャーいくよ。」
「え、でもさぁ…」
パトが無理やりチャーを玄関までひきずっていく。



はやくして…



「マキ、ちゃんと戸締まりしてね。」


「わかってる。」



あんたの優しさはわかってる、



だから、



はやく行って!



「それと、なんかあったらすぐ呼ぶんだよ…じゃあね。」


パトは心配そうな顔で扉を閉めた。
いつもあいつには見透かされてる。
まったくパトにはかなわない。



けど、




もう、限界だった。




私は口元を押さえてトイレに駆け込んだ。




そして、





激しく吐いた。
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