灰色の羽
昨日は突然のことだったからだ、きっとそう。



自分に言い聞かす。



あんなものに私が流されるなんてありえない!



ずっと過去に沈めた記憶…



「マキ、具合は?」
パトはコーヒーを私に渡しながら聞いてきた。


「なんのこと?」


カップを受け取り、熱い液体を口内で味わう。


「平気ならいいんだ。」

小さく微笑んだあとパトはキッチンへと戻って行った。


奴の千里眼ぶりにはまったく舌を巻くしかない。けど、嘘はついていない。一晩時間をおいたおかげか、私の心は平静を取り戻した。


ふと窓を見ると、結露の水滴で曇っていて外はよく見渡せないが、音で今日も雨なのだとすぐに分かった。


「マキ、ちょっとあの子の様子見てきて。」


「なんで私が?パト見てきてよ。」
タバコの灰を灰皿に落とす。


「僕はチャー起こしてくるよ。朝食できたしね。」


「え?あのバカあんたんち泊まったの?」


パトはやれやれといった仕草で肩をすくめたあと部屋を出て行った。


私も重い腰を上げて寝室へ向かった。
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