灰色の羽
私はバカと話す時感情を殺すようにする。
イラ立ちを最小限におさえる為だ。

まぁ…大抵は徒労に終わるけどやらないよりはまし。


バカの会話から得た情報は、あいつがなにか拾ったこと、それが私の家の前にあること、
以上。






「……はぁ」


あまりに少ない。

おそらく捨て猫か捨て犬、もしくはそれに準じる小動物のようなものを拾ったのだろう。



「死ね!」


叫んだ私を通行人が見たが気にせずタバコに火をつけた。

やっぱりだ、やっぱり私をイラつかせる!

自然と歩調が早くなる。眉間にシワがよる。
イラ立ちが抑えられない。

とにかく早くそれを確かめなくっちゃ…

猫でも犬でも、ハムスターでもフェレットでもオコジョでも関係ない。

とっととあのバカに突き返す。


マンションのオートロックをくぐり、エレーベーターに乗り四階を押した。

廊下を早足で駆け抜け、角を曲がった所に私の部屋がある。

どうせダンボールに入った猫やらがずぶ濡れになって愛らしい瞳で震えているに違いない。

私だって愛玩動物に興味がない訳ではない。むしろ好きな方だ。

だけど、残念なことにこのマンションはペット禁止だし、なにせあのバカがもってきた、いわばトラブルの種。


即撤去、即廃棄。


変な情が移る前にあのバカに突き返さないと。


決意をこめた強い足取りで私は角を曲がった。
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