片翼の天使達
目の前には、のどかな風景が広がっている
だか、彼女にとっては憎たらしことこの上ない
なぜなら、この風景の中で彼女は異なったものでしかないからだ
高い木の枝に腰を下ろして、遠くを見つめる瞳は琥珀色
風になびく髪は緩く波打つ深紅
ひどく珍しい色だ
「やーいトマト頭!」
馬鹿にしたような子供っぽい言い方
「女のくせになまいき!」
そんな風に言うくせに、同い年くらいの女の子を遠くから馬鹿にする
なんて馬鹿な奴らだ……
そう思いながら少女、フェニはため息をつく
まぁ、ムリもないのだ
確かこの間は、逃げようとしたからすぐに捕まえてぼこぼこに殴った
だから、わざわさ離れているのだろう
フェニはゆっくりと器用に枝の上に立ち上がる
その動きに男の子達は身構えた
その子供の小さな背中には白い翼がある
片翼しかないけれど……それは確かに翼なのだ
フェニは身をかがめて枝を蹴る
その時、フェニの背で翻る翼は深紅の髪よりも紅い、燃えるような色だった
嘲笑うかのように見せ付けて男の子に向かって飛び降りる
その深紅に怖じけたように男の子達は固まる