片翼の天使達
自分以外にはいるはずはないと思っていた………異端な人間
それが今、目の前にいる
漆黒の翼には黒に合わせたような優美な飾りが施されているのが目に焼き付く
……まるで見せ物のようで
「なんだよ、そんなに珍しいか?」
フェニの驚いた顔を淡々と見つめる漆黒の瞳
「あんた…何で……」
そう言うと、その先に続く言葉を遮るようにその少年は言った
「決まってる。俺も異端だからだ」
だから、見せ物小屋の檻の中にいる
言葉もないフェニの腕をその少年は掴んで引き寄せる
「静かにしろよ、あのばばあに気づかれたらお互い困るだろ?」
走り続ける馬車の上、声を潜めて少年は囁く
「俺がお前の正体を言えば、お前も檻の中だ」
檻………鉄の冷たい感触を思い出して寒気がした
あの家から逃げなければ、自分は今頃この少年と同じ場所にいたのだ
そして、今も危うい状況でしかない
今ばれれば恐らく捕まってしまうだろう
もうすでに、人間を檻に閉じ込めてしまうような連中なのだから
その少年は射ぬくような瞳と冷たい声音で言った
「ばらされたくなかったら……俺をここから出せ」