片翼の天使達
髪も瞳も肌の色も様々だ
しかし、なかなか現れない色もある
そういった色の子供が産まれると、災いを呼ぶ
そんな言い伝えはどこにでもある
ジャラリッと、鈍い金属音が響く
まだ成長期をむかえていない華奢なカムイの体に太い鎖が身体の自由を奪うように巻き付けられている
だが、カムイは気にした様子もなく立っている
目の前には高い空と切り立った崖がある
「カムイ……お前は破滅の紫を持って産まれた」
老人は聖書を胸に抱いて崖の先に立たせたカムイを見つめる
老人の周りには純粋にカムイを厭う、同じく白い服に身を包んだ若者達が静かに立っている
「災いを呼ぶと言われる瞳をもつからお前をこのような目に合わすのではない……」
ただ淡々と老人は言う
ただの言い伝えであろうと、確かに理不尽な迫害を受ける
だが、ここまでしなくてはならないほど
カムイは異端だった
「わかってるよ、じいちゃん」
何の含みもなく、少年らしい笑顔を浮かべ老人を見据える
老人は沈鬱な表情で胸に十字架を刻む
脇に控えていた若者たちが崖の先に立つカムイの前に立つ
そして、暗い声で呟いた
「お前は――――――」
そして、カムイはゆっくりと崖下に落とされた
その背には、有るはずの片翼はなかった