片翼の天使達
大きな街……カトレア
その街の領主……フランク公は享楽的な人物だった
カトレアには旅芸人や見せ物小屋がよくたちよる
領主がそういった一団を待遇よく招き入れるからだった
自身の邸宅に招き見せ物をする代わりに、その邸宅に泊まれるのだから旅芸人達は喜んでカトレアに立ち寄るのだ
市場には人々が溢れる程にひしめきあっていた
その片隅で、一人の男が街の中心にある領主の城を見上げている
その姿は何処にでもいるような青年のものだ
茶色の短い髪に衛兵の装い、そして背中には白い片翼
しかし、城を見上げる印象的な青緑の瞳には鋭い光が宿っていた
青年は睨み付けるように城を見てから踵を返す
市場の先、カトレアに入る門前で賑やかな音楽が聞こえてきた
恐らく旅芸人か見せ物小屋だろう
だが、それにしてはおかしな喧騒を感じてカトレアの衛兵………アレックスは腰に携えた剣を手に音楽の鳴る方へ駆けていった