君の御影に見た滴
「耕造さあん」
 

沢を出て車輪に手をふり、歩いていると家の近所で麻が二人の女と一緒に僕を手招いていた。


麻は僕よりも一つ年上で、小さい頃からよく面倒を見てくれていた。
 

でも、実のところあまり麻に良い印象を持っていなかった。


「あの姉さんの所に行ってたんか?」
 

麻は車輪のことを『あの姉さん』と呼び、名前を口にするのも嫌がった。


名前を口にしたら、のどがつぶれると僕の目の前で大笑いしたこともあった。


その姿の何と浅ましかったことか。


僕は麻の方がよっぽど人に祟りをもたらしそうな気がした。
 

麻が僕の面倒を見てくれていたのは、決して純粋な好意からではない。


僕の見目が良いから、良いようにしつけて僕を自分のもとにはべらそうとしていたのだ。
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