君の御影に見た滴
眉間には深いシワが出来ていた。


僕はなぜそれをそんなに嫌がるのか分からなかった。


「だって、名前知らんし、他に呼びようがないやんか」
 

その言葉を聞いて、途端に彼女の顔は明るくなった。


「車輪や」


「車輪って車の意味か?」
 

車輪と名乗った女は首を少し傾けて、


「さあ、どうやろねえ」


と言った。
 

後に車輪の母に会って、名前の由来を聞いたけど、先にも言ったように僕には分からなかった。
 

その夜から、どこからともなく車輪は現れて、僕の影を踏んだ。


車輪が影を踏むことにはきっと何か意味があるんだろうと思ったけど、ただからかって遊んでいるだけのようにも見えた。
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