君の御影に見た滴
「車輪は恋人、おらんのか?」
 

車輪と僕は沢にいた。


もう夏になりかけていて、額に汗が染み出るような季節だった。


「何でそんなこと聞くん?」
 

車輪は浅い川の水で額の汗を洗い流していた。


「だって、毎日僕とばっかり一緒にいるやんか」
 

年頃の女が子供とはいえ男の僕とずっと一緒にいて、支障はないのだろかと思ったのだ。


「だって耕造はええ男やもん」
 

車輪は手にすくっていた水を僕にかけた。


「答えなってへんやん」
 

すると車輪は下を向き、かすれるような声でこう言った。


「私みたいな白痴、誰が相手にするねん」
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