君の御影に見た滴
「白痴なんかとちゃうやんか」
 

僕は思わず声を張り上げた。


「同じようなもんや。私の父親はアメリカ人なんや。私は混血の子なんや」
 

初めて会った時、気づいていたことなのに、僕はそのことをすっかり忘れていた。


たしかに、「悪魔がきた」と大声を出して笑って走って行く子供たちに出会ったこともあった。


だけど今は異国の者を敵として戦っていた頃とは違う。


もう鎖国していた頃とも違うのに、なぜそんな風な態度をするのだろう。
 

隠せば良いと言っているわけではない。


異国の者を差別する意味がないのだ。


ましてや日本に住み、日本の教育で育ってきた車輪をどうしてみんな避けるのだ。
 

僕がおかしいのだろうか。


僕の考え方の方が間違っているのだろうか。


僕が車輪に惚れているからそんな風に思うのだろうか。


「それでも僕が車輪を好きなことに変わりない」
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