君の御影に見た滴
家に帰ると麻がいた。


腕をくんで、まるで怒ったように玄関の上に立ちはだかっていた。


「来てたんか」


「来てたんかやない」
 

麻はそれまでに見たこともないような不機嫌な顔をしていた。


きっと学校が終わった後、長い間僕が帰るのを待っていたのだろう。


「耕造さん、最近、いったいどこに行っとるん?いっつも帰るの遅いやんか」


「麻には関係ない」
 

僕は最近、買ったばかりの靴を脱いだ。


沢の砂利の上をよく歩くから、少し砂がへばりついている。


「せっかく買ってもらった靴、そんな汚して、金持ちやからって物大切にせんでどうすんの」
 

別に大切にしていないわけではない。


汚れればちゃんと洗うし、使っていればこのくらいは仕方がないはずだ。
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