君の御影に見た滴
麻の僕に対する興味は消えうせていた。


残っているのはきっと、面倒をみてやったのに裏切られたという思いと、男は自分に興味を持ってはくれないという劣等感だろう。


十三だったあの頃、たしかに麻は可愛らしかったし、将来は想いをよせてくる連中もたくさんいるだろうと思われて当然の顔立ちをしていた。
 

だけど、麻は半年前、通り魔にあってしまった。


顔立ちの良い者ばかりを狙う刃物を持った女に顔をきつく切りつけられてしまったのだ。


しかもバッテンの字に。


その傷は深く、縫わなければならないくらいだった。


医学の進んでいないこの国で、そのバッテンの傷跡を消せる医者はどこを探しても、どれほどの金を出してもいなかった。
 

その通り魔を捕まえたのがいかんせん、車輪だったことが麻の心をさらに傷つけた。


車輪は襲われそうになっている少女のすぐ近くを歩いていたようだ。
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