君の御影に見た滴
「耕造はきっと、麻と結婚するんやろうなあ」
 

突然、車輪がそう言った。


僕は驚いた。


車輪が麻を知っているとは思わなかったからだ。


「何で麻と僕が結婚しんとあかんのや」
 

麻に好意を持ったことなど一度もない。


麻だってもう僕のことなんて何とも思っちゃいない。


「だって、耕造はお金持ちの息子やからな」
 

車輪の言う意味が分からなかった。


「今の時代に金持ちも貧乏も関係ないやろ」
 

僕がそう反論すると、車輪はため息をつくように笑った。


「それは耕造がええ奴やからや。ええ男はいっつも犠牲になるんや」
 

五歳上の車輪は、僕の知らない何を知っているのだろう。


あの時の異国の男ときっと何かあったのだと思うけど詮索する気にはならなかった。
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