君の御影に見た滴
僕は父がなぜ麻と僕を結婚させたがるのか分かった。


麻の親が大会社の社長だからだ。


「お前は麻の顔が醜くなったからって麻を見捨てるんか」
 

父はそんな風に言った。


僕を卑怯な男だと責めるふりをしているのだろう。


そうすれば僕が負い目を感じるかと思ったに違いない。


「麻は美しいじゃないですか。誰やって結婚してくれる。やけど車輪は違います」
 

父はため息をついた。


「同情は命取りやぞ」
 

それ以降、父は何も言わなかった。
< 31 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop