君の御影に見た滴
車輪の誕生日が過ぎて一月が経った頃、いつもの沢で車輪はうずくまっていた。


まるで川の水で自分の息の根をとめうようとでもしているように長い時間、顔を水に浸していた。

少し遠くでそれを見ていた僕は、急いで走って行き、車輪の体を抱き起こした。


「何してるんや」
 

車輪は髪も水浸しにしていた。


「あんたこそ急に何すんねん。冷たい良い具合の水やったのに」
 

それを聞いた時、僕は自分がとんでもない勘違いをしていたのだと気づいた。


車輪はただ、のどが渇いて川の水を飲んでいただけだったのだ。


「髪の毛まで川に流れてたから自殺でもする気かと思ったやんか」
 

僕がそう言うと、車輪は大口を開けて笑った。


久しぶりに見た笑顔だった。


こんな突き抜けたような笑い方が大好きだったのだ。


だからとても嬉しかった。
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