君の御影に見た滴
僕と麻の噂を信じてしまって嘆いている車輪は見ているとつらかった。


そんなことは起こらないと言っても、信じてはくれなかったから。


「あんたは坊ちゃんやから」


と言って。


「耕造、もう離したら?」
 

そう言われた車輪の顔は僕の唇のすぐ下にあった。


いつもなら車輪の方が上にいるのに、何だか新鮮だった。


「嫌や」
 

僕はもっと強く抱きしめた。


「耕造、痛い」


「僕だって男やからな」
 

僕は車輪のひたいに口付けをした。


そして、唇に初めて唇を合わせた。


車輪は少しだけ抵抗したけれど、すぐに僕にしがみついて、何度も何度も口付けを交わした。


息が荒く、自分たちが大人と子供ではない、男と女なのだと分かり合えた時だった。
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