君の御影に見た滴
「俺はただ、車輪のためになればそれで良いと思っているだけだ」
 

車輪はその男をたしかにショーンと呼んだ。


麻にめかけでも良いとまで言わせた男の名前だ。それがまさか、この男なのだろうか。


「麻には決められた婚約者がいるんよ」


「でも、それは車輪の恋人だろう」
 

まさかこのショーンという男は、自分が愛した車輪のために、僕の婚約者と噂される麻に近づき、愛を語ったのだろうか。


それを麻は本気の愛だと勘違いしたまま、あんなに嬉々とした顔を僕に見せていたのか。


それはあまりに哀れだった。


「そんなんされても私は嬉しくない。ショーンのことだってもう好きやないんよ」
 

車輪は顔を真っ赤にさせた。


「知ってる。だけど、俺は車輪を愛してるから、車輪のためになることをしたい」
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