君の御影に見た滴
ショーンの方はきっと助からないだろう。


麻は真実を知らないまま愛しい人に死なれてしまうのだ。


でも、知るよりはよっぽど美しい思い出に出来ると思う。


だって、僕の父も麻の父親も、婚約を取り消したりしてはいなかったのだから。
 

僕はきっと学校を卒業すれば麻と結婚させられるのだろう。


それまでは車輪と一緒にいたい。
 

そう思い、僕は車輪の母親の許可をもらって車輪の家に住まわせてもらうことにした。


家には、学校を卒業したら帰りますとだけ紙を残した。


それだけで伝わったのか、僕を無理に連れて行こうとする者はいなかった。


「ヘッセのな」
 

車輪の母親が言い出した。


「覚えてるか?ヘッセ」
 

たしか、車輪の名前の由来になった小説を書いた人の名前だ。僕は首を立てに振った。


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