君の御影に見た滴
そう言っても反応がない。


僕は不安になって車輪の体を持ち上げた。


さっきまで束ねられていた髪はほどけて乱れ、車輪の顔は水に濡れて青くむくんでいた。


「車輪?」
 

何度呼びかけても車輪はもう返事をしなかった。


車輪は、顔を洗える程度の桶の水で水死したのだ。
 

僕は何が起こっているのか分からなかった。


警察が来て、もしかしたら誰かに殺されたのかもしれないと言われても僕には何のことかさっぱり分からなかった。分からないから涙も出てこない。
 

車輪の葬式を僕と彼女の母親だけでやった。


でも、僕はなぜ自分がこんな行為をしているのか理解出来なかった。
 

車輪が死んだ?


僕が持ってきた水で?


殺された?


僕の父親が雇った者の手で?
 

その時、車輪の母親がぼそっとつぶやいた。


「私があんな名前をつけたから……」
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