君の御影に見た滴
でも、そんなことは関係なく、僕には車輪の無理して気味の悪い女を演じるところが好きだった。
 

車輪は美しかった。


色が白い以上に彼女の輪郭はなめらかで、目は鳥が通った後の風のように美しい切れ長だった。


そんな車輪を大人の男達が囲んでいるところをよく目にした。


大人の男達よりも少し背の高い車輪は、その長い手を大きく広げて男達を振り払い逃げていた。
 

そんな時、自分がもう少し大人で、体格の良い男であったら良かったのにと思う。


奴らは車輪の大きな胸や尻を触ろうとしていた。


遊び半分の気持ちだから車輪一人で逃げ切ることが出来るけど、もし本気で車輪の体をむさぼろうという者が現れたら、僕が助けなくてはいけない。


そのためにもっと力強い男にならなくてはならない。


車輪を守れる青年になってみせる。そう誓ったのは十四の歳だった。
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