君の御影に見た滴
なのにどうして僕は生きながらえているのだろう。


父が死に、母が死に、髪に白髪が混じっても、僕は生きている。


結核が治ったと言われて、すぐに父の会社は倒産した。


僕は一人になり、働いた。


結局、車輪に踏まれた影をそのままに、妻をめとることもなかった。


僕は一人でどうして生きているのだろう。


自殺を考えたこともあった。


でも、車輪がそれを許してはくれなかった。


「耕造は傷つかんでいいねん」
 

そう言って。
 

僕は傷ついたらいけない。


車輪がそう言った。


僕は誰に傷つけられることもなく、人を信じないで、ただ生きていくしかなかった。
 

車輪の影踏みは言葉でまで踏んだ。


僕は生きて、何もなく、ただ呆然と、隙間の向こうの空に向かって歩いて行かなければならない。
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