君の御影に見た滴
車輪はうまい具合に砂利に髪をつけずにしゃがみこんでいた。
何をしているのかと思って近づいてみると、彼女の足元には小さな沢蟹がいた。
車輪はここの川で水の流れるのを見るのが好きだった。
そして、ときどき沢蟹を捕まえ、僕に見せるのだ。
「うまそうやね」
僕は揚げた沢蟹があまり好きではなかったので、「かわいそうや」と言って車輪の指から沢蟹を奪って川に返した。
「何でかわいそうやねん。他の生きてるもんは、耕造も普通に食べてるやんか」
そう眉をひそめる車輪を見て、たしかに僕の言っていることは正しくないと思った。
「苦手なんや」
僕が正直に答えると、車輪は立ち上がって僕の頭のてっぺんをわしづかみにし、ごしごしとなでた。