君の御影に見た滴
「まだまだガキやなあ」
 

そんな風に言って。


車輪は僕のことをすぐに子供扱いする。


そのくせ、この前みたいに影を踏むふりをして抱きしめようとするのだ。
 

車輪に影を踏まれると息がつまりそうになる。


彼女が僕の体にふれようとしているのが分かるから。


それは決していやらしいものではなかった。


愛しい。


そう、愛しいと言っているように感じられた。
 

それは僕が車輪のことを見下したり、下賤な者を見る目でみたりせず、真正面から車輪を一人の女として見ていたからだと思う。
 

車輪姉さんと呼ぶ男どもは、たいていは彼女のことを売春婦と同じような者という視線で見ていたし、女は『姉さん』という言葉で少し距離を取ることで混血の悪魔の呪いにかかるのを避けようとしているようだった。


車輪はただの優しい女なのに。


「耕造はいつか、もっともっと良い男になると思う」
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