君の御影に見た滴
車輪は五つも離れた子供の僕の何をそんなに愛してくれていたのだろう。


いつも不思議だった。


車輪の周りにはいつも人がたくさんいて、その中の何人かは僕のように車輪を真正面から受け止めてくれていただろうに、車輪はいつも僕を待っていた。


学校の帰り道で、この沢で、歩く道の先で。
 

たしかに彼女の想いは恋愛の愛であったと思う。


だけど僕は子供で、それにどう答えてやれば良いのか分からなかった。


だからその体を抱きしめ返してやることも出来てはいなかった。


それでも車輪は満足していたように見えた。
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