噛みつくようなキスをして



「……いや。待て。誰か来る。」


しかし、青年は人の気配がする脇道の向こうへ警戒心を表した。


そして、次の瞬間、彼の前を横切ったのは……栗毛色の緩く巻かれた長髪。


蒼海を思い出させる大きな瞳はこちらに気づいた途端に大きく見開いていた。


「……」


美人か、と聞かれればそうではないかも知れないが、なかなか整った顔立ちではある。


どうやら服装から察するに村娘のようだ。


それを確認した途端、安堵して青年は肩の力をふっと抜いた。



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