噛みつくようなキスをして
しかし、現在スリニエル家は貧困の真っ只中に居た。
勿論、出来る限りの努力はしたのだが、それも既に限界を越えていて、借金は増すばかり。
となると、爵位と引き替えに援助を申し出てくれる金持ちの商人とレティシアが結婚する…その方法しかこの家には残されていなかったのだった。
始め、その話が持ち出された時にレティシアはそれを断固拒否していた。
何しろ、まだ16歳を迎えたばかりの彼女に求婚を申し出てくるのはいづれも30過ぎの男ばかりだったのだ。
だが、心労のために父親であるスリニエル男爵が倒れてから、レティシアは自分の家がどれほどの窮地に立たされているのかを痛感した。
そして、自分よりも一回り以上年上の男と結婚する決意をして、今に至るのだった。