噛みつくようなキスをして
「ありがとね、アリオン。もう下がって良いわ。」
しかし、父親が仕事をするとなると、違った意味でレティシアの仕事が増えたようなものだった。
何しろ、これから父親に仕事を引き渡すための準備をしなければならないのだから。
「あ、待ってください。レティシア様!」
しかし、いざレティシアが仕事に取りかかろうとすると、アリオンがとっさに制止の声を発した。
そんな少年の行動にレティシアはきょとんとした様子で「まだ、何か用でもあるの?」と尋ねるが、アリオンは気まずそうに笑うと、その問いに答えた。
「その…引き継ぎ用の資料は僕が用意しますので、レティシア様は先見隊の方々のお相手を…」
その言葉にレティシアはなるほど、と内心毒づいた。