秘密な彼氏

その頃、千夏は何気にテレビをつけた。

昼のワイドショーの時間だった。

そこにはデビュー５年目の人気俳優の写真集発売中
との内容だった。

ともかくその写真集発売日にその俳優との握手会の
ために長蛇の列という内容だった。

そこには…見覚えのある、どこかで見た…

その俳優は青いイタリアンカラーの愛車から颯爽と
降り、俺様きどりな感じで、ナルシストっぽいタイプ…
サングラスをかけたまま、たくさんのファンに手を
振り、会場に立ち、コメントしている。

｢皆さん、今日はありがとうございます!!
俺の渾身の写真集です。たくさんの人に買って頂きたい
です。今から握手会をやります!!楽しんでください！｣

千夏はこの俳優が気になった。

どこで見たんだろう!?まあ、売れっ子俳優ならテレビに
何度も出てるだろうし…

でも、もっと近くで、見たような気がする。


そう！そうだ、私、この人の車に引かれたんだ。

千夏はすっかり忘れていた…

なぜ、この人なのに、社長が謝りに来たんだ？

一体なんで!?

千夏はさっぱり意味が分からなかった。ただ、聞こえづらい
耳で、必死にそのテレビ内容を聞こうとしていた…

｢コン、コン…失礼します。｣

社長と、秘書さんだった。

千夏が振り向いた瞬間…テレビから聞こえてきた、
その俳優の名前が分かった…

｢俳優青山光輝さんの…」と、芸能リポーターが、喋ってる…

三人の間に沈黙があった…

秘書さんが、あわてて千夏に話かけようと、していたが、
社長が、静かに遮り、
ゆっくり口を開いた…

｢実は、事故を起こしたのは、そのテレビに出ていた…
青山光輝と言う男です。
私の１人息子です。お伝えしなくて申し訳ありません…」

窓の外は夕立がｻﾞｧｰと降りだしていた…

千夏はまだ頭のパズルがいまいちはめ込めていなかった。

その時、コン、コン…ガラッ…

現れたのは、さっきまで、テレビのワイドショーを独占
していた、青山光輝…だった。