いばら姫と王子様 ~AfterDays~
「……なあ、桜。メールっていいものなのか?」
黒づくめのゴスロリ桜は、静かに言った。
「まあ、いつでも見れるものですし。言葉では伝えきれないものは、絵文字で代用できますし。伝達事項には向いていますわね」
想像してみる。
『煌大好き(はあと)』
なんて芹霞から送られてきた日には、絶対俺四六時中そればっかりみてるんだろうな、なんて思っていたら、奇妙な視線が俺に注がれていた。
「煌がにやにやして気持ち悪い……」
「…玲、一応煌の診察するか?」
「診察までもないですわ、櫂様」
「本当に判りやすいよね、煌は」
何なんだよ、皆して。
皆、いつでも芹霞と繋がる携帯電話持っているくせに。
「俺も携帯持ちてえ~~ッッ!!!」
耳元でいつも芹霞の声を聞きてえ。
寝る前には"おやすみ"を、朝起きたら"おはよう"を聞きてえ。
芹霞の写真を携帯の画面にして見ていてえ。
ハート付きのメールを眺めていてえ。
「「「「無理」」」」
全員が全員、否定した。
だから俺は。
芹霞が退院したら、絶対独り占めしようと心に決めた。