いばら姫と王子様 ~AfterDays~
 
「更に。紫堂くんの従兄の玲様……玲さんまで、あんな綺麗な人まで、皆揃いも揃って芹霞に夢中。そりゃ芹霞は可愛いけれど、モテすぎですよ。何ですか、皆のあの甘々な目。あれで隠しているつもりだなんて、私から見れば片腹痛い。何ですかね、ここまで私を度外視されればいっそ潔く、悔しいとか屈辱だという心は湧いてこなくて。

あの子、本当にあれだけ皆に愛されて全く気づいていないんです。

どうして判らないのかが、私には判らない。

ありえない。

頭のねじ、絶対とれちゃってると思い、本当に心配になりました」



「ははは。そうか……」


「はい、それでも不思議なことに、芹霞はきっちり彼女なりの筋を通してます。だけどその筋が常人とは違い、わざわざ遠くにある柵(しがらみ)の中に突っ込み、限りなく"馬鹿"の方へ駆け抜けようとしてます。おまけに無鉄砲で頑固過ぎますし。だから同じ人間として彼女の未来を憂い、放っておけなくなってしまいました。言うなれば、彼女の"天然力"に知らず知らずに引き摺られたというのか」


そして私はけらけら笑ってしまった。


「ご、ごめんなさい、実のお姉さんに。

それからですね、芹霞を通して"私"を考えるようになったのは。

人をみかけで判断し、ある時は誰かに媚びて恋愛の駆け引きを愉しんでばかりしてきた私が、何の根拠を持って芹霞に人格の優位性を見せつけようとしているのか。

私に芹霞並の信条はあるのか、って」


そして私は自嘲気に笑った。


「芹霞は、己を犠牲にしても他人を救おうとする精神の持ち主です。

そんな芹霞に、立場がどうの経験がどうのを語るには、私自身が同じ土俵にすら上がれていない……薄っぺら過ぎる存在であったことを悟りました。

それは私の劣情として心に残ったのと同時に――

私の友達が芹霞であることが、私の一番の誇りだということを、改めて思い知らされました」


そう――私は、


「今回由香りんという、芹霞と共通の友達も出来ました。

もう一度、私は"友情"について考え、今度は私が芹霞を護っていきたいと思っています。

私自身、芹霞を守れるくらいに強くなりたいと思っています」


芹霞という存在に出会えたことを感謝している。
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