いばら姫と王子様 ~AfterDays~
§残ったモノ
└櫂Side*****
櫂Side
*************
最近、何だか気が重い。
理由は判っている。
芹霞が俺の近くにいないからだ。
昔から芹霞は常に俺の隣に居て、俺だけが芹霞を独占してきた。
未来永劫俺だけが、その権利があると思っていた。
だが現実は――。
その芹霞に別れを告げ、玲と共に居る芹霞を残して帰路につく。
まるでひと時の逢瀬を終えた愛人のように、ひっそりと。
その立場の危うさに、肌寒く思うのは季節のせいだけじゃない。
「いつも居るモノが居ないのって、溜まらなく切ねえよな」
暗闇の中でも目立つ、橙色の髪をした煌がぽつりと言った。
「今まで近くにありすぎて、それが当然のように思ってきていて。突然それがなくなったら、どうしていいのか判らねえや」
それは俺も同じ。
後ろ髪引かれる思いで残した愛する女に、別れの言葉を告げねばならない寂寥感。
芹霞から感じたあの暖かさが急速に失われ、今心にあるのは虚無感。
それは煌も同じらしい。
「お前さ――…、
芹霞に回していた分の紫堂の闇の力取り戻したんだろ。だけど何だか気力が充実してねえよな」
煌に痛い処を突かれた。
*************
最近、何だか気が重い。
理由は判っている。
芹霞が俺の近くにいないからだ。
昔から芹霞は常に俺の隣に居て、俺だけが芹霞を独占してきた。
未来永劫俺だけが、その権利があると思っていた。
だが現実は――。
その芹霞に別れを告げ、玲と共に居る芹霞を残して帰路につく。
まるでひと時の逢瀬を終えた愛人のように、ひっそりと。
その立場の危うさに、肌寒く思うのは季節のせいだけじゃない。
「いつも居るモノが居ないのって、溜まらなく切ねえよな」
暗闇の中でも目立つ、橙色の髪をした煌がぽつりと言った。
「今まで近くにありすぎて、それが当然のように思ってきていて。突然それがなくなったら、どうしていいのか判らねえや」
それは俺も同じ。
後ろ髪引かれる思いで残した愛する女に、別れの言葉を告げねばならない寂寥感。
芹霞から感じたあの暖かさが急速に失われ、今心にあるのは虚無感。
それは煌も同じらしい。
「お前さ――…、
芹霞に回していた分の紫堂の闇の力取り戻したんだろ。だけど何だか気力が充実してねえよな」
煌に痛い処を突かれた。