いばら姫と王子様 ~AfterDays~
目の前には病院がある。
最上階に居る芹霞の病室。
櫂と桜を先に行かせて、俺はフロアの洗面台の鏡の前に立つ。
殆ど使われていないらしいそこは、俺1人だ。
改めて見る俺の顔。
いつ見ても、がっかりする。
図体ばかりでかくて、櫂のような繊細さの欠片もねえ。
勝てる要素が何1つねえ。
でもよ。
こんな俺でも、もし芹霞が選んでくれるなら。
その可能性が少しでもあるならば。
将来、今よりはマトモになると思うから。
俺だって成長期だし。
これからどう化けるか判らないだろ?
鏡の中の俺は、泣き出しそうなくらい真摯に俺を見つめていて。
情けない俺が、あちら側からこっちを見ている。
そんな顔をして俺を見るなよ。
なあ、俺は"漢(オトコ)"になりてえんだ。
そんな情けねえ面したヘタレ男は、永遠にそっち側行ってろよ。
真実と欺瞞は一緒にはなれねえんだ。
お前は"欺瞞"なんだよ。
だから――こっちに来るな。
黒尖晶石がしゃらんと音を立てた。
俺はそれを握り締め、強く願う。
どうかどうか。
何処までも芹霞と一緒に居れますように。
どうかどうか。
俺の想いを芹霞が受け止めてくれますように。
どうかどうか――。
芹霞を俺に繋ぎとめられますように――。
繋ぎ止められる、そんな俺になれますように――。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
「繋ぎとめられているのは……俺の方? なあ…いつまでもずっと俺だけを繋いでいてくれよ」