いばら姫と王子様 ~AfterDays~
見透かすようなその瞳に、私は本気で苛立ってきた。
「随分と強引な勧誘ですわね」
皮肉を込めて私は言う。
「勧誘? 違います。私は貴方に聞いているだけです」
「急ぎますので、失礼致しますわ」
くるりと踵を返し歩き始めると、彼はまたついてくる。
いい加減――殺気が篭る。
「おやおやおや。いけませんね、そんな目は」
そういいながら、まるで怖気づかない彼に、私は警戒した。
動じない暗紫色の瞳――
私はそこに、見慣れた闇を見た。
直感する。
同業者、だ。
血を見ることも、人を殺すことも慣れきった人間の目。
腕が――立つ!?
私はテディベアをぎゅっと抱き締めた。
「そんな顔、なさらないで下さい。ただ聞いていただけですから」
私は警戒を緩めない。
それを見て、アーモンド型の目が愉快そうに細められた。
「覚えておいてください。
人は天使にも悪魔にでもなれる。
天使と悪魔は表裏一体。
鏡の――背中合わせの関係です」
私は距離を詰めようとする彼に、一歩退いた。
私の安全領域を確保するために。