いばら姫と王子様 ~AfterDays~
「貴方がいかに"貴方"を拒もうと、それでもいつかは"貴方"に帰る。
鏡の世界は、いつしか真実に還るでしょう。
真実の世界では、どんな盲信も意味がない」
彼はそう意味ありげに笑う。
「目で見えるものが真実とは限らない。
だからといって、虚偽だとも限らない。
この世界が真実であると、貴方はそういい切れますか?」
そして彼はポケットに手をいれて、何かを私に差し出した。
「壊れたロザリオ……修復するのも捨てるのも貴方次第。
神を信じるのも信じないのも貴方次第。
天使になるのも、悪魔になるのも貴方次第。
全ては神の定められた摂理の中。
貴方の信じぬ神は――鏡の向こうで貴方を待っていますよ?」
それは本当に瞬間的なことで。
私が。
この私が。
一瞬にして間合いを詰められた。
「壊れたもので恐縮ですが、これを貴方に差し上げます。
きっと、お役に立ちますよ?
どうか――よき旅を」
旅?
「また、お会い致しましょう。漆黒の鬼雷――葉山桜くん。
貴方の心が真に開放されんことを――。
父と子と聖霊との御名において、アーメン」
彼は胸の前で十字を切り、そして消えた。
私の目の前で。
それはまるで幻の如く――