いばら姫と王子様 ~AfterDays~
私の手には、鎖の切れた十字架。
我が身を犠牲にして磔になった、救世主イエス・キリストの姿はそこにはなく、
代わりに十字架に絡まっているのは怪しげな蛇。
それはまるで、エデンの園でイブを誘惑した蛇の如く、こちらに向けて口を開いている。
私を誘惑する気か。
私はそんなものには揺るがない。
信じられるのは力。私自身。
蛇は私を見ている。
切れた鎖と十字架を補修して繋いでいるのか、わざとらしく針金がまきついている。
針金を外せば、何かが変わるのか。
"力"という紫堂に縛られている私も、何かが変わっていくのか。
何とも抽象的なその十字架を私は握り締める。
彼は何者なんだろう。
暗紫色の服と瞳。
私を知った風の、正体不明な男――。
――また、お会いしましょう。
それは予感。
近い未来、きっと私はまた会うだろう。
そんな予感がした。
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「蛇に誘われ、行き着く先は何処なのだろう。至福か堕落か。私は――自分の心が判らない」