それでも痩せたい恋物語
朝はいつも、学校まで彼と一緒に行く約束をしていた。
私の家の近くのコンビニで待ち合わせ。

いつもなら早く会いたくて、走ってすぐの距離なのに。
今日は異常と言ってもいいくらい長く感じた。
「ちょ・・・なんで今日だけこんな疲れんの・・・っ」
気が遠くなるような感じと、少しのめまい。

やっとの思いでコンビニに着くと、下を向いて何かを食べる彼の姿。
「お、来た来た、舞~」
私の名前を呼んで左手を上げる。
手には・・・
「おでん、食べる?」
コンビニで買ったであろう、おでんの器。

おでん独特のあったかい香り。
発砲スチールの入れ物の中からは、湯気が出ている。
私が好きなはんぺん、大根、餅巾着が入っている。
今すぐにでも、ありがとうと言って食べたいところだけど。
「今日はね・・・お腹いっぱいなの」
ごめんね、と言って差し出されたおでんから目をそらす。
「そんなこと言うなって俺も食ったし・・・、じゃあ捨てるしかない・・・?」
最後の一言で、私を見る。
そんな潤んだ目で見るな!

これは罠だろう。
この人の体になら、もっともっと入るはずだ。
そうわかっていながらも、もったいないという気持ちから頷いてしまった。
「ほら、あーん」
「あ、・・・はーい」
口を小さく開けると、半分に割られた大根が入ってきた。
その瞬間、開始早々に決まり事を破ってしまった罪悪感。
けれど正直、食べ物にありつけた嬉しさも生まれた。

ちょっとならいいでしょ。




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