桜色の糸*完結



イギリスに着いて1週間が経った頃、新しい家のリビングのソファーで仰向けになり


「桜見たいな…」


手の中にある桜の木の写真を見つめる。
心と別れた後、写した桜の木の写真はブレていた。
きっと震えていたのが原因。
はっきりと写っていない桜の木を見て残念に思う。


(ねぇ、しんちゃん。
私達は桜の木に引き付けられ出会い、付き合えたんだよ。
だから私達の糸は"桜色の糸"だね!)


("桜色の糸"かぁ…いいなそれ!
俺達の糸は桜に守られていて絶対に切れないんだぜ!
だから、ずっと一緒にいろよ?)


---しんちゃん。


丈夫な桜色の糸は私の弱さのせいで呆気なく切れてしまった。

切れた糸はもう繋がることはできないけど、切れた所を結びたいと思うのはいけないかな…?


この先、赤い糸を持って誰かが私の前へ現れても、この小指には絶対に結ばせない。

私の小指に切れたままの"桜色の糸"が絡まっていると信じているから…



左手の小指を右手で握り締め、目から溢れた涙は桜の木の写った写真へと落ちていった…







『桜色の糸』完結



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