桜色の糸*完結
彼が不意に振り返り、視線が交わると同時に無表情だった彼の顔が笑顔へと変わった。
クラス中は歓喜の声が上がり、隣では未来が「凄いかっこいい…」と言っていたが今の私の耳には届かなかった…
笑顔の彼を見て思い出すさっきの出来事。
---
私の髪にキスを落とした彼。
ドキドキと暴れる心臓を落ち着かせるために視線を逸らそうとするが、彼の漆黒の瞳に引き込まれ逸らせない。
「名前…」
「--えっ?」
「俺の名前呼んで?」
彼の漆黒の瞳は"早く"と訴えかけているようだった。
彼の言葉を理解し名を呼ぼうと努力するが恥ずかしい…
今まで男の子と一線を引いていた私には、彼氏という高いハードルを一気に飛び越えてしまい頭がついていけないでいる。
彼の瞳をジッと見つめ
「し、しん、ちゃん…」
強引な彼に負け、名を読んだ。
「ハハッ」
彼が笑った瞬間、温かな気持ちになり自然と頬が緩む。
「よろしくな、あお。」
彼の笑顔は太陽に照らされ輝いていた。