桜色の糸*完結


「――入学式を終わりにします。」


司会の先生が「解散」と言うと生徒達の話し声や笑い声で騒がしくなる体育館。

今日、創立15年東第三中学校に入学。


ごった返す体育館を幼なじみ兼親友の市原未来[イチハラ ミク]とはぐれないよう注意して抜け出す。


「はぁ、疲れた…」

「うん、校長先生の話長かったね…」


隣で溜め息を吐く未来。
肩より長い少し癖のある黒髪を耳の横の高さで二つに結わき、くりくりしたぱっちり二重の瞳、140センチ程の身長の未来は誰からみても可愛い。

未来と歩くと頭一つ分でる私の身長は160センチ。
バスケをやっているせいか、発育がよく中学一年生では背が高い方で男子より高い。

疲れた表情をする未来は男子からの視線を集め、私から見ても守ってあげたいタイプ。

私とは全くの正反対。


自慢の親友から視線を逸らし空を見上げる。
澄み渡る青い空、雲一つ無い。
太陽に照らされ春の温かい日が体を照らす。

体育館から教室に戻るため新入生で溢れ返った渡り廊下を、前の生徒の後に続いて歩く。


突然、風が吹き長い髪が風でフワリと舞った。


「あっ!」

「えっ!?葵ちゃん!!」


視界に入ったピンク色の花びら。
未来の制止の声を背で聞きながら、花びらを追い掛けて駆け出していた。




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